効果がない、だけじゃない!
メルマガに代表されるメールマーケティングは、多くの企業で採用されているデジタルマーケティングの代表格です。
とは言え、コンテンツ作りは時間と労力のかかる作業ですから、時には惰性だけで作ったものを配信してしまうことは、ほとんどのマーケターが経験済みかと思います。
コンテンツが薄い、まとまりがない、見た目がイマイチ、あるいはターゲットが不明瞭…
こうしたメールが実際には無害どころかマイナスに働いてしまうのが、ダメなメールマーケティングの代償です。
往々にしてそのパフォーマンスの悪さに目をつむることが習慣化している部分もあります。
そのため、損害の度合いを具体的に意識することが重要です。
ダメな事例とその代償
では、ダメなメールによって実際にどんな損害を被るのかを考えてみましょう。
- ダメなメールはブランドイメージを棄損する
ブランドとは、特定の商品だけではなく「ブランド体験」全体を指します。
メールが与えるイメージも、消費者にとってはそのブランドに対するプラス要因にもマイナス要因にもなります。
写真やレイアウト、コンテンツの見た目もそうですが、それ以外の不備や平凡な印象によってブランド体験は低下し、結果としてブランド全体への期待度も落ち込みます。
ブランドとは、製品のロジカルな優位性だけではなく、感情的な価値も含めた総合評価の上に成り立っていることを忘れないようにしましょう。 - 期待度の低下とエンゲージメントの低下は比例する
ダメなメールを受信すると、受け手は無意識のうちに期待度を下げてしまい、そのメールにはエンゲージしなくなります。
つまり、1通のダメなメールによってそれ以降に配信されるメール全体への期待度が下落し、未開封や離脱、配信停止の増加が生じます。 - ターゲットによってはダメなメールになり得る
ダメなメールになる要素は、何もコンテンツの書き方や見せ方だけではありません。
あるターゲットにとっては優良なメールが、別のターゲットにはダメなメールになることがあります。
受け手にとって「自分に関係があるか否か」という点も、ダメなメールかどうかの評価ポイントになりますから、ターゲット選びには正確性が求められます。
「逸失利益」という文脈で考える
ダメなメールによって具体的な損失を被るというのは、よほど意識しない限り、普段はなかなか考えないものです。
理由の一つは、具体的な金額に換算しにくいからです。
そこで、実際の損失を、新規見込客の獲得やリピート購入者の離脱という文脈で考えてみましょう。
ダメなメールの直接的な影響は開封率の低下や配信停止という形で現れます。
仮に現在、リピート購入が期待できる既存顧客3,000人と、未購入の見込客3万人からなるデータベースを有していたとします。
実際に何かを購入してくれるお客様の毎月の平均購入単価が2,800円で、新規見込客1人の獲得に費やしている広告やマーケティング費用が190円とします。
ダメなメールを配信したことにより、そうではないメールの場合に比べて配信停止やメールの未開封率が「0.25%」増加したらどうなるでしょうか。
一見すると非常に小さな数字のように思えますが……。
離脱者数:3,000人 x 0.25% = 7.5人
逸失月額売上:7.5人 x 2,800円 = 21,000円
逸失年額売上:21,000円 x 12ヶ月 = 252,000円/年
つまり、ダメなメールを1本配信することにより、既存顧客の年間売上見込みだけでも年間25万円も損をする結果となります。
影響はそれだけにとどまりません。見込客の獲得には1人当たり190円を費やしています。
このデータベースの例で見ると、見込客10人に対して顧客化するのは1人なので、実際には顧客獲得単価は約1,900円になり、離脱した7.5人分の獲得コスト14,250円も失われることになります。
さらに、まだ顧客化していない見込客の内0.25%が離脱してしまった場合、どうなるでしょうか。
離脱者数:30,000人 x 0.25% = 75人
推定顧客数:75人 ÷ 10 = 7.5人
ダメなメール1本で損害は50万円以上!?
つまり、既存顧客で離脱してしまった人とはまた別に、本来であればやがてお客様になってくれるはずだった見込客も7.5人減ってしまったわけです。
そうなると、実際の損失額は532,500円ということになります。
リピート客3,000人の年間売上はざっくり1億円という計算になりますから、そのうちの約50万円はそれほど大きな数字には感じられないかも知れません。
しかし、これは何か大きな失敗をした結果ではなく、少しばかりダメなメールを配信してしまっただけで逃してしまった売上です。
そう考えると、馬鹿にできない数字です。
以上は架空の事例なので、実際の現場では他にも色々なコストや要素がもう少し複雑にからむと思われます。
ほぼこれに近い方法でザックリとした逸失利益の概算を出せますので、機会があればぜひ試算してみてください。
完全に正確な数字ではなくとも、無害だと思い込んでいたダメなメールが、実際にはどれほどのダメージをもたらすのかがお分かりいただけるでしょう。
執筆者プロフィール
- 株式会社ルシダスの代表にしてマーケティングロックスターを自認しており、経営とマーケターの二足のわらじでお客様の課題解決に邁進する…[続きを読む]
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