早寝早起きが板について、マーケティングロックスターなのにやたら健全な生活をしている、ルシダスの池上です。
マーケティングの世界で各種施策を下支えするテクノロジー、通称マーテック(Marketing Technology = MarTech)は日々進化し続けています。
次々と登場するテクノロジー、サービス名、概念。どれもこれも横文字だし、ついていけなくて息切れしそうになったりしますよね。
そんな中、今一番熱いのはアカウント・ベース・マーケティング(Account Based Marketing)、略してABMです。
またまた横文字のコトバが……でも、心配しないでください。
何か革命的な変化をもたらすまったく新しいもの……ではありません。MAと同じように、「本来であればやりたかったけど、技術的に困難だったから諦めていた」ことができるようになってきた、というお話です。
なお、ABMはB2Bに特化した概念だという誤解も一人歩きしていますが、B2C事業においても関係しますので、B2Cマーケターもぜひ、最後までお読みください。
ABMを理解するには、まずその購入プロセスを理解する
さて、ABMとは一言で言えば、興味喚起から検討を経て、購入判断をするまでの一連のプロセスが、1人の人間ではなく複数の人によってなされる、より複雑な購入プロセスに対応したマーケティング施策のことを指します。
例えば、ある業務用ツールの導入を検討している企業では、一般的にどのような購買行動があるのか考えてみましょう。
この段階では、関係ありそうな各製品について、その機能、性能、評価、事例、価格など、さまざまな情報を集めるでしょう。その収集した情報を元に、部門長がある程度の目星をつけて、今度は経営目線で必要な情報をピンポイントで収集していきます。
なぜなら、部門長の一存で導入決定ができない場合が多く、予算承認のための稟議には、必ず経営目線でのROIなどの説明が必要になるからです。
最後に、経営層の担当者、例えば執行役員などが、部門長の判断で絞られた最後の1本の製品で良いのかを判断しますが、ここでは機能も性能も見ることはなく、現場に任せています。
経営層が見るのは、その製品を販売している会社の事業規模や健全性など、経営リスクの有無を判断するための側面で、ROIとも異なります。
これを経て最終的に購入ということになるわけですが……。
行動データがすべてとは限らない
従来のマーケティングでは、ターゲットとされてきたのはあくまでも「個人」です。
ですから、(多少の工夫はあれど)1人の個人に対して、最初の興味喚起から最終的な購入にいたるまでのコミュニケーションもしています。MAなどのツールを使っている場合は、購入見込み度に応じて営業に送客するかどうかも決めている場合があります。
ところが、先の例のように、複数人が購入プロセスに関わっているような場合はどうなってしまうのでしょうか?
単純に行動データだけ見ると、最初に幅広い情報収集をした部門長の部下が一番多くのウェブページを見たり、コンテンツをダウンロードしていることになるので、この彼/彼女に向かって全速力で営業をかけろ! という結論になるわけですが……この人には、残念ながら購入決定権はないのです。
そのため、この部下にコンタクトを取った後に営業力のみを頼りに部門長へのアプローチをするなど、マーケティング活動の成果が不十分となるケースが多いのです。
ですから、本当は全力営業よりも、ボスである部門長が判断に必要としているデータを、マーケティング活動の一環として、適宜この部下に正しく渡してあげることが重要になるのです。
部門長は部門長で、行動データだけ見ると、大して多くのページを見てるわけでも、データシートをたくさんダウンロードしているわけでもありません。
したがって、ツールベンダー側のマーケターは、この部門長を営業には引き渡さなかったり、十分なフォローをしないなど、いつまでもファネルの上位にいる見込み度の低いリードに送るようなコミュニケーションにとどめてしまう可能性があります。
ところが、この人は見込み度が低いわけではなく、すでに(業者の知らないところで)部下からたくさんの情報を仕入れているのです。
この部門長が本当に必要としているのは、経営層を説得するためのROIが説明できる資料、他社の成功事例などです。
場合によっては、この人を集中して攻略することが、営業の最短の近道となります。
最後に経営層ですが、ここにいたってはフォームの記入などをしない可能性も高いので、フォームを記入しなくても追跡できる施策を講じたり、あるいは部門長を経由して必要情報を送る必要なども出るでしょう。
ABMを実行に移すための手法
いずれにしても、部下、部門長、経営層、最低でもこの3人が同じ会社の人間であり、同じツールに対するある程度の購入検討をしている、ということを把握する必要があります。
それを可能にするのがABMですが、そのやり方はさまざまです。
もちろん、具体的な機能があるに越したことはないのですが、なくても実践できることはたくさんあります。その1つがスコアリング。MAで複数のスコアを設定し、行動、デモグラ、そして役職などを独立して点数付けするという手法です。
上記の例で言えば、下調べをした部下は、多くのページを訪問し、たくさんの資料のダウンロードをしていますから、行動スコアは高いものの、デモグラや役職などのレベルは低くなります。
対する部門長は、行動スコアは低いが、役職などのスコアは高いわけです。
従来のようにスコアが1種類しかない場合、そのスコアが行動によって高まったのか、役職によって高まったのか、などの判断がつかないですよね。
こういった工夫と、そもそも「1人で購入決定するわけではない」という顧客マインドを理解して、企業名などでデータをまとめたりすることこそが、ABMのコアになるということです。
文字数に制限のあるブログですので事例は単純化しましたが、他にも社内インフルエンサーかどうかの判定など、実際の施策では「集団」の中の「個人」の役割などを見据えた施策など、多くの対応が可能です。
ABMにはB2C、B2Bの境界がない
最後に、事例がわかりやすいのでB2Bになりましたが、ABMは冒頭でも書いた通り、B2Cにも関係します。
自動車、家、マンション、不動産、ペットなどは、家族に相談をしなければ購入決定ができないものばかりですよね。
携帯電話なども、家族割プランを使っていれば勝手にキャリア変更はできませんし、意外とたくさんのプランがあります。
そして同じ家族でも、判断基準や決定ポイントはバラバラです。
ですから、B2Cマーケターにも、ぜひこのABMの手法を取り入れて、より的確なマーケティングを実践していただきたいと思います。
ABMについてさらに詳しく知りたい、自社で使えるアイディアがあるか知りたい、具体的なツールについて知りたいという方は、ぜひご連絡ください!
執筆者プロフィール
- 株式会社ルシダスの代表にしてマーケティングロックスターを自認しており、経営とマーケターの二足のわらじでお客様の課題解決に邁進する…[続きを読む]
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